ポリスラインを翔びこえて

「まこちゃんはそのままでいい。僕を変えて。僕をお兄ちゃんだと思わなくていい。ここにいるのはホムラマコトだと思って」

「……え、」

「別に身代わりでいい。僕は僕じゃなくていい」


何を言ってるんだ、セイ兄は。

くるっと体の向きを変えて、彼を正面に見る。

眉目秀麗な顔立ちは至って真剣に私を見つめる。


「……じゃあ、炎くんだと思って抱きしめていいの?」

「いいよ」

「炎くんだと思ってキスしていいの?」

「いいよ」

「炎くんだと思って襲っていいの?」

「いいよ」

「炎くんだと思って脱がせていいの?」

「いいよ」

「炎くんだと思って食べていいの?」

「いいよ」


セイ兄の両肩に手をあててトン、と力を込めてみる。
抵抗なくそっと後ろに倒れる彼。

簡単に押し倒せて、それを覆うために動くと、静かな部屋にシーツの擦れる音だけが響く。

私の影を、彼に落とす。


「……炎くん、」

「うん?」
< 272 / 300 >

この作品をシェア

pagetop