ポリスラインを翔びこえて
「“捜しものはこちら?”」
ぴら、と目の前で紙切れを振る。
「っ、それ……」
「1年前、ここで」
そう言ってゆっくり離れていくきみの体温。
やっと解放された熱は夜風に吹かれて消えた。
「“大事なものなの。返してくれない?”」
「“うん、いいよ”」
ありがとう、と言って差し出された写真に手を伸ばすも、触れる寸前で消える一枚と捕らわれる手首。
「っ、」
「“今夜だけ一緒に過ごして”」
「今夜『だけ』ならごめんよ」
「“変なことはしないから、お願い”」
「ふふ、うそつき」
「“ただ一緒にいたいだけ”」
「さみしがり屋さんね」
「“承諾しないなら返さない”」
「どっちにしろ帰してくれないでしょう?」
「“交換条件”」
「……ふふ、承諾するわ」
断るという選択肢はもとから存在しなかったかのように速やかに契約は成立した。
そうして1年前のやりとりを再現する私たちが向かった先は、初めて一夜を、そして大好きの気持ちを明かした、あの場所。