ポリスラインを翔びこえて
「……なんだ。そういうことか」
「え?」
セイ兄は私の頬や唇に伝う涙を親指で軽く拭き取ってくれる。
「てっきり好きな人に酷いことされて苦しんでるかと思った。それなら僕が退治してやろうと思ったけど、違うんだ、よかったよかった」
「まあ、苦しいけど……ひどいことはされてないよ」
「まこちゃん、恋しちゃって悩んでいるんだね。歴代の恋は悲惨だったからもう一生男はいらないって言ってたのに、どうしようって」
「うん……」
過去の恋愛トラブルも、セイ兄にはたくさん助けてもらった。
それなのにまた、男運ゼロの私は歴史を繰り返そうとしているのか。
「まこちゃん、そんなに自分の首を絞めなくていいんだよ」
「く、首…!?」
首を絞められた光景が脳裏に浮かんだのを慌ててかき消す。
「まこちゃんはもっと自分の気持ちに正直になって、自由に生きていいんだよ。それが大人というものさ」
「じゆう、」
それは蒼羽家で育ってきて初めて家族から言われた台詞だった。