ポリスラインを翔びこえて
「騙すか騙されるか。殺すか殺されるか。力が弱ければ、従うか消されるか。あの世界はね、まこちゃんが思ってるほど甘くないわ」
「っ……」
「ママはね、まこちゃんが傷ついたり、大事なものを失ったりしてほしくない。その中心にいるような人と一緒になったって、まこちゃんが幸せになれるとは思えないわ」
「……大事なもの……って、何?」
「家族や職場の人、お友達、ご近所、お気に入りのお店、学生時代の繋がり、地域の方々……あなたの世界で関わってきたもの全部よ」
「それでも私は……っ」
「まこちゃん」
全部失う。全部無くなる。
私の大事なものが、全部。
この世界から消えたいのは私の方なのに。
この世界で22年も生きてしまって、大事なものを築いてしまって、失うのが怖くなってしまった。
それが、私の、越えてはいけない一線なんだ。
「…………わかった」
もうわかったよ。
はじめから──蒼羽家になった瞬間から、私はほんとうの自由を失っているんだ。