意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい

4章

私は今、自分がいったい何をされて、何を言われているのか、すぐにはわからなかった。

水が滴り落ち、助けを求めた方がいいのではないかと芽衣と蒼を見た。

しかし目が合うとすぐに視線を反らされた。

どうやら関わり合いたくないらしい。

その時、ひやっとした。

おそらく頭に残っていた小さな氷が滑り落ちたのだろう。

首筋に流れて襟の内側に入った。

それを合図にようやく冷静になれた。


「あの、婚約者ということは及川さんとお付き合いしているのでしょうか」

「は? そうよ!」


混乱しながらも少しずつ状況を理解する。

まさか及川さんに婚約者がいるとは夢にも思わなかった。

愕然とした。

よくよく考えると及川さんとは私の家かホテルでしか会ってない。

彼がどこに住んでいるかも知らないことに今更ながら気が付いた。

自分が情けなくて悔しくて心の中でため息をついた。


『新卒に手を出したって、からかわれるの嫌だから時が来るまで言わないでね』


及川さんの言葉が再び頭の中に蘇った。

及川さんのいう『時』というのが結婚のことだと信じていた自分が馬鹿だと思った。

まったくおめでたい脳である。

思わず笑みがこぼれてしまった。


「何、笑ってんのよ、あんた」
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