意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい

那原Side

薄暗いフロアに、階段のすぐそばのトイレから声が漏れていた。

那原はその場で足を止め、耳を傾けた。

大きな声で話す女たちの声が、静かなフロアによく響いていた。

聞こえてくる言葉は、明らかに妬みだった。


(我ながら、悪趣味だ)


那原はこんなところまで追ってきた自分の滑稽さを笑った。

しばらくしてトイレから女が2人、出てきた。

那原と目が合うと、彼女たちは一瞬だけ表情を強張らせた。

先ほどの話を聞かれていたのではないか、と思ったのだろう。

軽く会釈をして、那原の横を通り過ぎようとする。

那原は、微笑んだまま口を開いた。


「随分と、盛り上がっていましたね」

「え?」

「こんな薄暗いところまでわざわざ来て話すくらいなら、よほど大事なお話だったんでしょう」


女たちの足が止まった。


「な、なんですか、あなた」

「聞くつもりはなかったんですが、あれだけ大きな声だと、さすがに」


そう言って那原は鼻で笑った。

女たちの顔はみるみる赤くなっていく。

那原は女子トイレの方へちらりと視線を向けた。


「あの中に誰がいるか、知らずに来たわけではないですよね」
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