声の王子様 ~意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい~

2章

席に戻ると芽衣と蒼が身を乗り出して私を労わってくれた。


「紗枝、大丈夫!?」

「もう見てらんない、あの人ほんとひどいって」


芽衣が私の手をぎゅっと握り、蒼はまだ飯塚の後ろ姿が見えるあたりを睨みつけていた。


「トレイくらい自分で片付ければいいのに。何様のつもりだよ」

「しかもティッシュ沈めるやつ、あれ絶対わざとだと思う。紗枝が汚い顔するの見て楽しんでるんだよ」

「そこまでは、さすがに……」

「いや絶対そう。嫌がらせも飯塚さんは群を抜いてるって噂だよ」


芽衣は憤慨した様子で私の手をさらに強く握り、蒼は私に向かってフォークを突き出した。


「紗枝は優しすぎるんだよ。少しは反撃してもいいんだよ」


蒼がふくれっ面でそう言うと、芽衣も深く頷いた。


「そうそう。紗枝が我慢する必要ないって」


2人があまりに真剣に怒ってくれるので、なんだか申し訳なさと同時にじわりと嬉しさがこみ上げてきた。


「ありがとう。2人がいてよかった。でも本当に大丈夫」


こういう時、同期はすごく有難い。

それに私には他にも大丈夫な理由があった。

それは……

しばらくするとガヤガヤとにぎやかな声がし始める。

ちらっと見ると一気に顔が熱くなった。

大勢の人たちに囲まれて1人の男性がすぐに目の中に入ってきた。

彼の名前は及川良太。

私の最近できた少し年上の恋人だ。

そして初めて出来た恋人でもある。

最近は寝ても覚めてもほぼ彼のことで頭がいっぱいだった。

一昨日の夜のことが思い出され、胸がいっぱいになり食欲が抑えられてしまうほどだった。
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