意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい
「な、なんでここに?」


声が、みっともないくらい上ずった。


「3階で働いてるって言ってたから」


彼はあまりにも、あっさりと答えた。


「何しに来たんですか」


心臓が痛いくらいに音を立てていた。

手が震える。

そんな私とは裏腹に彼は口の端を上げた。


「ストーカーさんの職場、見学に来た」


一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


「え……?」


頭の中が真っ白になった。


「ストーカーって私のこと……ですか……?」

「そう。君」

彼の悪びれもせず頷く顔を呆然と見ていた。

顔が熱くなった。


「違います!」

「違うの?」


彼はわざとらしく首を傾げて、私を観察するように見た。


「じゃあ、なんであそこにいたの?」

「そ、それは」


言葉に詰まった。


「なんで、担当でもない打ち合わせに顔を出しに来てたの?」

「それは、その」


心臓の音が、耳の奥にまで響いてくるようだった。

言い訳を探そうとするのに、頭の中がぐるぐる回るばかりで、何も言葉が出てこない。

彼は、そんな私の様子を面白がるように眺めていた。

その目には、追い詰められた獲物を見るような、どこか楽しげな光があった。


「べつに、責めてるわけじゃないんだけどね」

「……」

「ただ、気になっただけ」


そう言うと、部屋の中にゆっくりと入ってきた。

床を鳴らす靴音が、静かな部屋に、やけに大きく響いた。

私は無意識に立ち上がり後退する。


「君がさ」


彼の声が、少しだけ低くなる。


「何を考えてるのか」


その声だけで、耳の奥がじわりと痺れた。

これは、リーガル様の声だ。
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