意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい
ふいに彼はフッと息を吐くだけの笑いをした。


「そんなに睨んでも、可愛いだけなんだけど」


一瞬、何を言われたのか理解できなかった。


(可愛いって、言った……? 今……この人が?)


リーガル様の声で、しかも本人の口から直接。

何度もイヤホン越しに画面越しに聞いてきた、あの声。

それが今、こんなにも近くで、自分だけに向けられている。

何か言い返さなければと思うのに、口を開いても、意味のある言葉になりそうもない。

顔が燃えるように熱くなっていくのが、自分でもわかった。

きっと今、耳まで真っ赤になっている。


(落ち着け、落ち着け、私。これは、ただのからかいだから)


そう自分に言い聞かせようとするのに、心臓は勝手に早鐘を打ち続けていて、少しも落ち着いてくれない。


「に、睨んでません」


かろうじて絞り出した言葉は、自分でも呆れるくらい、弱々しかった。

彼は、少しだけ首を傾げて、私の顔を覗き込んだ。


「怖がってるくせに、目は逸らさないんだね」


指摘されて、初めて気づいた。

たしかに、逃げ場もないのに、私は彼から視線を逸らせずにいた。


(……何、意地になってるの、私)


推しの顔を、こんな距離で見られる機会なんて、二度とないかもしれない。

そんな不埒な思考が、頭の片隅をよぎった自分に、余計に混乱した。
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