意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい
「謝る必要ないです」

「あんた、変な子ね。普通、あんなに見られた状況であんなことされたら、怒るんじゃないの」

「私が、怒る立場ではないので」

「それもそうね」


そう言うと彼女は立ち上がって、こう言った。


「金輪際、及川に近づかないこと」

「はい、もちろんです」

「でも」


彼女が黙ったので、私は顔を上げた。

すると目線を逸らして、こう言った。


「テレビ局は辞めるんじゃないわよ」

「どう……して?」

「だって、それであなたが辞めたら、私のせいみたいじゃない。だから、辞めないでよ」


そう言って、立ち去っていった。

後から知ったのだが、婚約者は上層部のご令嬢だった。

及川さんがコネで昇進したと思われないように、彼が結果を出すまで、交際している事実は一部の人間しか知らない情報だったのだ。

視聴率1位を取ったことで、ようやくお披露目になるところだったのに、私との浮気が発覚して大激怒。

結局、彼女は及川さんが悪いという判断をしたらしく、彼を地方の系列局に飛ばして、自分も付いていった。

私に何もないのは癪だから、と制作部からの異動を頼んだのも、彼女のようだった。

しかし、なんとなくだけど、私を好奇の目から守ってくれたのではないかと、都合よく考えることもある。

本当のところはわからない。

でも今、私がここにいられるのは事実だ。
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