意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい
思わず声を出してしまって、サラリーマンがこちらを見ていた。


「すみません……」


私は窓の外を見た。

街の明かりが次々と流れていく。

その光の合間に、また那原の顔が浮かんだ。

余裕たっぷりに笑う顔。


「じゃあね、紗枝」


耳の奥に、まだその声が残っている。


(また、会うつもり……なんだよね、あれ)


スマホを取り出し、画面を見る。

登録されたばかりの『那原圭一』の文字が、そこにあった。

指が勝手にその文字をなぞりそうになって慌てて画面を消した。


(だめ、だめ、絶対だめ)


4年前の教訓が、頭の中で警鐘を鳴らす。

もう現実の恋愛はしない。

そう決めたはずだ。
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