意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい

5章

午後。

私は大量の資料を抱えて廊下を歩いていた。

今日は25階に行く予定はない。

それだけで少し気持ちが楽だった。

エレベーターの前でボタンを押す。

扉が開き中に入って10階のボタンを押した。

ゆっくりと扉が閉まっていく。

その瞬間――


「待って!」


声が聞こえた。

私は反射的に開ボタンを押した。

駆け込んできたのは、男性スタッフだった。


「すみません、ありがとうございます」

「いえ」


男性は息を整えると私の持っている資料に目を落とした。


「持ちますよ」


そう言うと男性は私から資料を取った。


「大丈夫ですよ」

「いいから、いいから」

「すみません…」

「ライブラリーの方ですか?」

「はい」

「いつもありがとうございます。資料、助かってます」

「あ、いえ。こちらこそ」

「鈴木さんって、いつも忙しそうですよね」

「え? 名前?」

「知ってますよ、俺、何度もライブラリー室、行ってるから」

「そうですか? すみません」

「覚えてないんですね」

「すみません……」


ライブラリー室にスタッフが来ると私は顔を伏せている。

対応している時もなるべく顔を見ないように、でも失礼が内容に首元を見ていた。
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