意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい
エレベーターがゆっくりと下降していく。

私は隣に立つ男性をちらりと見た。

私の資料を、まるで自分の荷物のように抱えている。


「資料、重くないですか?」

「はは、このくらい大丈夫ですよ」


彼は笑った。

笑顔の可愛い人だった。


「あ、そうだ。僕は藍沢稔(あいざわみのる)って言います」

「藍沢さん」

「はい」


10階に到着する合図がした。

エレベーターを降りる。


「どこですか?」

「ここまでで大丈夫です。それより藍沢さんはエレベーター降りて――」

「あ、僕はこれから10階で会議なんです」

「そうですか。でも私はすぐそこなんで」

「ならお返しします」


藍沢さんから荷物を受け取った。


「じゃあ、またライブラリー室で」

「あ……」

「どうかしました?」

「すみません。ライブラリー室に来てくださっていたのに私、ちゃんと覚えてなくて」


彼はふふっと笑った。


「気にしなくていいですよ、今日、やっと話せたので」

「え?」


彼は少し照れたように笑っていた。


「いつも忙しそうだから、話しかけるタイミングなかったんですよ」

「そうだったんですか」

「はい」


彼が笑う。

その笑顔に少しだけ緊張が解けた。

まだ男性と2人で話すのは緊張する。

(あれ……でも、あの人は)


「じゃあ鈴木さん、また」

「はい、また」
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