意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい

那原Side

10階の廊下を那原は1人で歩いていた。

この後の打ち合わせまで、まだ少し時間がある。

スタッフに案内された会議室へ向かう途中、廊下の先に見覚えのある姿が見えた。

鈴木紗枝だった。

見知らぬ男が彼女の至近距離にいた。

荷物をちょうど受け取っているところだ。

紗枝が男に向かって少し笑った。

それだけで那原はなぜか苛立たしい気持ちがしたのだ。

その表情を見た瞬間、那原の足が止まった。

男が何かを言う。

紗枝が頷く。

那原の足はいつの間にか、止まっていた。

紗枝が那原には見せたことのない笑顔を見せていた。

那原はじっと紗枝を見つめていた。


「じゃあ鈴木さん、また」

「はい、また」


その声だけが聞こえた。

紗枝が去っても藍沢の方は紗枝をいつまでも見送っていた。

その男の姿を那原はずっと見つめていた。
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