意地悪なボイスアクターの危険な執着愛から逃れたい
その時――

ドアをノックもなしに大きな音をさせて誰かが入ってきた。

私は驚き顔を上げると、その人と目が合う。


「あ、すみません」

「いえ」


どうやらADのようだ。

胸に手を当てる。

心臓がまだ速い。

私は深呼吸をして椅子に座り直した。

こんなことで驚いていたら仕事にならない。

そう思うのに、頭の中にはあの人の顔が浮かんでしまう。


「……来ないでよ」


思わず口からこぼれた。

それから数分が経ち、ようやく集中できた。

1時間ほどかけて仕事が終わった頃。

廊下の向こうから、また足音が聞こえた。

今度は、さっきよりゆっくりだった。

コツ、コツ、コツ――

一定の間隔で近づいてくる。

私はマウスを握ったまま、動けなくなった。

足音が、ライブラリー室の前で止まった。


「……」


息を止める。

入ってくる気配がない。

それなのに扉の向こうに人の気配がする。

私は画面を見つめたまま、じっと待った。

扉は開けられない。

私は恐る恐る扉に顔を向けた。

誰もいない――


「……はぁ」


どっと力が抜けた。

椅子の背もたれに身体を預ける。


「もう……」


私は床に置いていた鞄を急いで膝の上に置いて、片づけを乱雑に行った。

パソコンの電源を立ち上がりながら切る。

急いで、帰り支度をしてライブラリー室を出た。

廊下を急ぎ足で歩いた。

その時、数メートル先にあるエレベーターの扉が開いた。

その瞬間は、まるでスローモーションのようだった。
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