『ちゃんと愛してたのに』
 2 ◇ホテルのバスローブを羽織った夫


 夫がダブルベッドにホテルのバスローブを羽織った緩んだ姿で座っているのが
目に入る。

 夫の第一声は「ウイッス」だった。
 まったくふざけた男だ。

 真理恵の姿を改めて捉えた長谷川が、今更のように「有り得ない、なに? 
何ですか?」とぎゃあぎゃあ言い始める。

『うるさいよっ。このおたんこなすの泥棒猫が』

 そう怒鳴ってやってもよかったが、まぁそこはひとまず大人の判断で抑えた。


「どうして、君ここにいるの? 」
 夫の次の台詞がこれだった。


「こっちの台詞よ。
 あなた、何でこんなところにそんなあられもない姿でいるのよ」

「は? 何でカメラ向けてんの?」

『答えてやんない~。それより私の質問に答えろや』

「そんなことより、その恰好何? 引くわ~。何なのこの部屋」

「ゆっくりくつろいでるだけだけど? それより撮るのやめろよ」


「てか、その恰好といい、ヤル気まんまんじゃないの?」

「どこがだよ。そっちこそ、こんなところまで来て何やってんの?」

「てか、何やってんのよ」
 私たちは『何・何・何やってんの』の、応酬合戦に突入した。

「何してんの?」

「そっちこそ何してんのよ」

「勝手に入って来てなにしてるんですか?」
 女が合戦に入って来る。


 しかし、不倫なんぞしておいて、その言いぐさはなんなのさ。
 何、あんたが切れてるのさ。
 しかも、いつでも出て行けると思っているのか、ドアの側に張り付いてるのよ
女ったら。

「あなた、ほらっ、あなたもこっちへ来なさいよ。早くっ」
 私は、長谷川に声を掛けた。

「何してるわけ」
 じれったくて、また夫に無意味な問いかけをする。

「ゆっくりしてる。……てか、何で撮ってるの?」

「こうでもしないと、あなたが何も話してくれないからでしょ」

「話さない? って?」

「どういうこと? 」またもや女が夫に続き、口を挟む。

「あなたもそこに座れば」


 私は女に夫のとなりに座るよう言う。
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