歩く冷蔵庫先輩が推し絵師でした~秘密のレッスンはじめます~
「でも……」

「白石さん」

いつまでも渋る私に先輩が少し強めの声を出す。

「用のない残業はダメです。
それに今日は泊まりになりますから、帰ってください」

「……はい。
帰ります」

先輩の言うとおり残りたいのは私の我が儘で仕事は関係ない。
これ以上、残っているわけにもいかず、帰り支度をする。

「じゃあ、お先に失礼します」

「白石さん」

私の腕を掴み、先輩は廊下へと連れ出した。

「これ。
タクシーで帰ってください」

「え?」

先輩が財布から引き抜いた五千円札を握らせてくる。

「あの、でも、今日は仕事で……」

「僕が。
あなたになにかあったら嫌なんです。
だからタクシーで帰ってください。
いいですね」

それだけ言って先輩はまた、宣伝広告部へと戻っていった。

「なにかあったら嫌、か」

きっと絵を教えるような仲の子になにかあったら嫌だという意味なんだと思う。
わかっていても特別扱いされた気がして、顔がにやけていた。

ありがたくタクシーで帰り、今日はもう遅いので執筆は断念して寝ることにした。
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