歩く冷蔵庫先輩が推し絵師でした~秘密のレッスンはじめます~
写真もいいが、実際に見てみたくて食い下がる。
しかし先生の顔は渋ーくなっていった。

「それ、どういう意味かわかってる?」

「どういう……?」

先生がなにを言いたいのかわからなくて首が横に倒れる。
そんな私を見て先生は困ったように後ろ頭を掻いた。

「お前、ひとり暮らしの男の部屋に行きたいって言ってる自覚、ある?」

「ひとり暮らしの男……?」

目の前に座る彼を改めて見る。
眼鏡でスーツ姿の彼は私の仕事の先輩であり、推し絵師で。
……いや。
筋張った大きな手。
私よりも体格のいい身体。
七三分けにされ、一分の隙もなくセットされた黒髪。
面長な顔にのるスクエアの銀縁眼鏡。
その奥から私を見つめる切れ長な目。
薄いけれど形の整った唇。
シャープな顎。
まじまじと観察し、今頃になって相手は私の憧れの人である前に男なのだと自覚した。

「えっと、あの、……すみません」

顔が熱を持ち、椅子の上で小さくなる。

「まあ?
お前に男として見てもらえてないのが少しショックではあるが?」

テーブルに肘を突き、先生は行儀悪くフォークを振った。

「それだけ信用してくれているのは、嬉しくもある」
< 58 / 113 >

この作品をシェア

pagetop