歩く冷蔵庫先輩が推し絵師でした~秘密のレッスンはじめます~
そのまましばらく見つめあったあと、唐突に先輩の纏う空気が緩んだ。

「そうですね。
いつも言い訳を切り捨てる僕が、ぐだぐだ言っていてはダメです」

「はい、そうです」

やっとわかってくれたのだと嬉しくなる。

「本を作るのはいいですが、ひとつだけ心配があるんですよね」

「心配?」

この期におよんでまだ売れないなどなんだのいうのかと思ったが。

「実際の灯守がにこりとも笑わない真顔の男だと知ったら皆さん、がっかりしないでしょうか……」

先輩は真剣に悩んでいる。
感情の出にくい真顔のせいで歩く冷凍庫と呼ばれているのがコンプレックスなのはもう理解しているので、なんと励ましていいのかわからない。

「そう、ですね……。
お酒を飲んでから接客するとか?」

酔っているときの先輩は口調がフランクになって表情が豊かになるが、言われなければ酔っているなんてわからないくらい普通だ。
だったらありなんじゃないだろうか。

「そうですね、最悪はそれしかないかもしれません」

「まあ、灯守先生が出店するときはお手伝いしますから、そんなに気負わなくていいですよ」

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