歩く冷蔵庫先輩が推し絵師でした~秘密のレッスンはじめます~
椅子を回し、キッチンに立つ先輩の後ろ姿を見つめる。
先輩にとって私は会社の後輩でイラストのファンでしかないはずだ。
きっと、恋愛感情なんて持たれたら迷惑に思うだろうし、もう絵を教えてくれなくなるかもしれない。
だったらこの気持ちは私の胸に秘めておかなければ。

先輩がコーヒーを淹れてくれているあいだに本棚を眺める。
机の横には大きな本棚が二台設置してあり、本がたくさん詰まっていた。

「凄い本ですね」

「ほとんど資料ですよ」

コーヒーのいい香りが鼻腔をくすぐる。
解剖学の本はもちろん、世界の風景なんかの写真集もあった。

「あ、スケッチブック発見」

きっと前に言っていた、解剖学の図説を模写したものだろう。
本棚の一番下にいくつも突っ込んである。

「お宝、お宝」

「あっ、白石さんそれは」

私がスケッチブックを手に取ったところで珍しく先輩が焦った声を出す。
しかし、かまわずに開いた。

「……なにこれ」

中に書いてある絵を見て固まる。
そこには私の顔がスケッチしてあった。

「これは見られたくなかったのに」

先輩の手が、私からスケッチブックを取り上げる。

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