歩く冷蔵庫先輩が推し絵師でした~秘密のレッスンはじめます~
「このあいだ、あなたは自分にお金を使うより僕が絵を描くのに使ってほしいと言いましたよね?」

「……はい、言いました」

けれどそれがどうしたというのか理解できない。

「僕も同じです。
僕に無駄なお金を使うより、白石さん自身の創作活動に使ってほしい。
だからこのスケッチブックは差し上げます」

私の手を取り、先輩がスケッチブックを抱かせる。

「でも推し絵師に貢ぐのは無駄なお金じゃありません」

「それはそう、ですが」

一度、言葉を切り、私に抱かせたスケッチブックを先輩は軽くぽんぽんと叩いた。

「依頼で描いたのでしたらしっかりお金をいただきます。
けれどこれは僕が勝手に描いた絵です。
あなたにモデル料を払わなければいけないくらいなので、受け取ってください」

推し絵師のスケッチブックをタダでもらうなんて畏れ多い。
けれど先輩の言うことも一理ある。

「……じゃあ、ありがたくいただきます」

渋々、本当に渋々だけれど、携帯を引っ込めた。

「はい。
……あ、そうだ」

キッチンへ戻りかけていた先輩が足を止め、振り返る。

「額装は絶対にダメです。
ダメですからね」

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