触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。

 これらの言葉から、航からの不器用な『好き』を感じ取ってしまうのは、自惚れなのだろうか。
 見返すたび、たまらず便箋を胸元に抱き寄せる。
 報われない片思いにすっかり慣れきった私は、こんなふうに解釈の余地がある甘い言葉だけで、満たされてしまっていた。

 けれど――。

 もし本当に、彼も私を『好き』だと思ってくれているのだとしたら。
 こんなに長い間、何も告げずに平気でいられるものなのだろうか。

 私なんて、返事を書くたび『本当はまだ大好きだよ』と、うっかりペンを滑らせてしまいそうになるくらいなのに。

 そんなふうに考えると、心がまた曇る。

「…………」

 便箋を箱へ丁寧に戻し、今度こそ寝ようと布団に飛び込む。
 寝返りを打ちながら、先月からずっと悩み続けている『航が東京に来てくれたときの行き先』を頭の中で巡らせる。
 一緒に行きたいところなんて、ありすぎてとても決められないのだ。

 尽きない悩みはありつつも、結局は、ただ彼に会えるだけで、こんなにも嬉しい。
 暗闇の中、自然と口元が緩んでしまいながら、夢の中へと旅立った。


 そして――中学最後の夏を迎える。
< 100 / 242 >

この作品をシェア

pagetop