触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
 ◇

 塾から帰宅し、夕食と入浴を済ませると、時計の針はすでに二十三時を回っていた。

 一度は布団に潜り込んだものの、どうしても眠りにつけず、再び起き上がってクローゼットの扉を開ける。
 背伸びをして一番上の棚に手を伸ばし、ひっそりと置かれているネイビーのレザー調のレターボックスを取り出した。

 それは、航から届いた手紙を大切に仕舞っている、私の宝箱。
 文通を始めて数か月経った頃、立ち寄った駅前の雑貨屋で一目惚れして買った。

 彼が教えてくれた、あの街の深い海の色にそっくりだったから。

 机の上にそっと置き、アンティークゴールドの留め具をカチャリと外す。
 一年半以上も積み重ねてきたやり取りは、今や箱から溢れ出してしまいそうなほどの厚みになっていた。

 一番上に重ねてある、特にお気に入りの数通をそっと抜き出す。


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 じゃあ、会えないじゃん。

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 これは、去年の秋。
 お互いの修学旅行の、行き先は同じ京都なのに、日程が一週間だけずれていると知ったときのもの。


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 あと、今年もバレンタインちょうだい。

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 これは、今年の一月。東京に珍しく大雪が降った日。
 まったく違う話題のあと、ぽつりと添えられていたもの。
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