触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
まるでそこを狙って運んでくれたかのように、電車は彼の前でぴたりと停まる。
車窓越しに目が合い、思わず顔のすべてが緩んでしまうのを感じた。
プシュー、と重い音を立て、扉が開いた瞬間。
外に飛び出し、勢いよくその胸へと飛び込んだ。
航は私をしっかりと受け止めながら、ぎゅっと抱きしめ返してくれた。
そのたしかな感触に、ようやく『会えた』という実感が込み上げてくる。
少しだけ身体を離し、至近距離で見つめ合った。
私の頬に擦れた彼の短い毛先から、爽やかな柑橘系の香りが漂う。
彼から初めてする香り。ヘアワックスだろうか。
隠しきれない喜びを顔いっぱいに滲ませていると――航は私を引き寄せ、唇へ軽いキスを落としてきた。
「……っ、ちょっと!」
慌てて周囲を見渡す。
朝一番の下り電車が着いたばかりのホームには、私たち以外の姿はなかったけれど。
調子に乗って不意打ちしてきた航をジロリと睨むと、特に悪びれる様子もなく笑っていた。