触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
 ◇

「海ーっ!」

 ビーチに着くなり、私は繋いでいた手を一度離して砂浜へ駆け出した。

 航の住む街でその美しさを知るまで、特別好きというわけではなかった、海。
 今では、何より私を癒やしてくれるものとなっている。

 水質は、ここよりさらに南下した航の地元のほうが、やっぱり綺麗だけれど。
 絶え間ない波の音と、風が運ぶ潮の香りに、心がすっと満たされていく。

 靴が濡れないくらいの距離まで波打ち際に近寄り、のんびりと散歩を始めた。
 海のそばで暮らしていると日常の風景だからか、やはり航は落ち着いている。

「ねえねえ。そういえば、中間テストが全部返ってきたんだけどね……」

 並んで歩きながら、学校の話を始める。
 毎日メッセージのやり取りはしているし、時間が合えば電話もする。
 時折、手紙だって書いている。
 けれど、やっぱり本人を目の前にすると、聞いてほしいこと、笑ってほしいことが、次から次へと溢れ出してしまうのだ。

 だが、彼の反応は薄い。

 振り返ると、こちらをじっと見てはいるものの、上の空なのは明らかだった。
< 128 / 242 >

この作品をシェア

pagetop