触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
並んで海を眺め、波音に耳を澄ませていると。
ふと、「夏帆」と、名前を呼ばれた。
「なに?」
頭を上げ、見つめ返す。
「したいんだけど」
「……えっ!?」
やはり、ねだられた。
たしかに、早朝のビーチに私たち以外の姿はない。
けれど、ここは紛れもなく外だ。
「……ええ……」
戸惑い、視線を彷徨わせる。
「今日はこのあと、水族館と博物館でしょ。人多くてできないし」
そんな私をよそに、航は平然と理由を述べてくる。
「…………」
返答に迷って口ごもっていたら、そっと肩を引き寄せられた。
「だめ?」
そして、甘い声でかけられる追い打ち。
「……っ」
駅のホームでされたときのように不意打ちで奪ってくるときもあれば、こうやって律儀に許可を求めてくるときもある。
その塩梅が絶妙で、なんだか悔しい。
でも、結局――触れたい気持ちは、私も同じなのだ。
「……いいよ」
小さく頷くと、唇が重ねられた。
そして徐々に、その角度と熱が変わっていった。