触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
別れ際の温度差
「……航?」
「…………」
その横顔に声をかけるものの、返事はない。
遊んだ日の帰り際、航はいつもこんな感じだ。
静かというよりは、押し寄せる寂しさを紛らわせるため、あえて一歩引いて心を閉ざしているような――そんな気がする。
電車が到着するまで、日の落ちた駅の待合室に座っていた。
誰かの靴底について運ばれてきた海の砂だろうか。コンクリートの床で靴を滑らせると、ジャリッと乾いた音が鳴る。
昼間の穏やかな陽だまりの気配はとうに消え失せ、今はしんとした冷気が漂っていた。
プラスチック製の水色のベンチから伝わる冷たさに無意識に肩をすくめ、繋いだ手と手の間にある温もりにすがっていた。
「航?」
俯いて黙っている彼を、下から覗きこむ。
「……ん?」
怒っているわけではないのは伝わってくるけれど、その唇からはそっけない声がこぼれた。
繋がれた二人の手を、私がもう一方の手のひらで包み込んだ。
視線が合ったところで、努めて明るく微笑んでみせる。
すると、航はようやく口を開いた。
「……そんなに寂しそうじゃないよな。夏帆は」