触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
初めて知る、冬の青さ
あのときの「不思議な自信」は本物だったらしい。
彼に会いたい一心で机にかじりついた私は、母との約束を見事クリアしてみせた。
航が、十六歳になる土曜日。
一人で鈍行電車に揺られ、彼が暮らす海辺の終着駅に降り立った。
冬に来るのは、初めてだ。
乾いた空気に混ざる潮の香りは、新鮮だった。
改札の向こうで待っていてくれた姿を見つけた瞬間、足取りと心が一気に弾みだす。
東京では見かけたことがない有人の改札を通ると、まっすぐに駆け寄った。
「航っ!」
閑散期のため観光客はほとんどいない構内に、浮ついた声が響く。
「……いらっしゃい」
優しい瞳で迎えてくれた彼。
私は、いつものように思いきり綻んでいるであろう顔のまま伝えた。
「誕生日、おめでとうっ!」
初めて、手紙や電話越しではなく直接祝うことができた。
航は、周りの目も気にせず抱き寄せてくれた。
ここがまるで自分の帰る場所であるかのように、安心する体温だった。