触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
彼の香りが満ちる部屋
高校二年生になって、約四か月。
眩しい夏を迎えた。
「ねえ、あとどのくらいで着くー? 早く彼氏に電話したいんだけど」
後部座席から、凪沙の不満げな声が飛んでくる。
ハンドルを握る父は呆れ笑いをしながら、カーナビにちらりと視線を向けた。
この春に中学受験を終えたばかりの凪沙だが、入学してからの僅かな期間で、すでに新しい恋人ができたらしい。
私は助手席の窓から覗く、車が進むにつれて深みを増していく海の青さに、ただ心を奪われていた。
今、航の宿に、向かっている。
彼の誕生日以来、約半年ぶりに訪れる。
早く、あの胸に飛び込みたい。
朝からずっと、上の空だった。