触れられなくても、君がいい。 ――青い二人の、遠距離ロマンス。
 ◇

 車が宿の駐車場に滑り込むと、エントランスの前に立つ航の姿を、私はすぐに捉えた。
 思わず窓ガラス越しに大きく手を振る。

 彼は隣にいるご両親の目を気にしてか、控えめに振り返してみせた。

「夏帆ちゃんって、彼氏には結構甘えるタイプなんだね」

 凪沙の呆れたような声に振り向くと、母も可笑しそうに笑っていた。

「あ……変かな……」

「いや、別に。航くんはそういうのが好きかもしれないし。私なら、わざと素っ気なくして気を引くけどね」

 相変わらずそんなませたことを言いながら、伸びをしていた。

 車が停まるや否や、待ちきれなかったように扉を開け、荷物もそのままに駆け寄った。

 航は、照れくさそうに私を見下ろす。
 抱きついてしまいそうになるのを堪え、横にいるご両親に頭を下げた。

「……こんにちはっ! 去年の冬は……ありがとうございました」

「いえいえ。いらっしゃい、ゆっくりしていってね」

 女将さんは目尻を下げ、温かく微笑んでくれる。

 背後から「かほちゃーん、わすれてるよー」と、湊人が私の重たいリュックを両手で抱え、ヨタヨタと歩み寄ってきた。
 慌てて駆け寄り、それを受け取った。
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