触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
階段を上がっていく航の広い背中に、黙ってついていく。
二階の突き当たりが、彼の部屋だ。
「……どうぞ」
扉が開かれる。
お邪魔するのは、冬以来、二度目。
そっと、足を踏み入れる。
「……あ。航の匂い」
そう呟いて深呼吸すると、航はまた慌てたように窓を開け放ち、風を入れようとした。
私は「そのままでいいのに〜」とじゃれながら制する。
プレゼントを出そうとしているのか、航は背を向けてクローゼットを開けた。
波音と潮風が入り込んでくる窓辺に近づいた。
これが、ここでいつも、航を包んでいるものなんだ。
「夏帆」
名前を呼ばれ、振り返る。
「はい。誕生日……おめでとう」
差し出されたのは、少し大きめの包み。
「ありがとう……開けていい?」
航が頷くのを見て、そっと包装紙のテープを剥がす。
中に入っていたのは、綺麗な水色のストールだった。
「ごめん、今は季節外れだけど。春に会ったときのこと、思い出して」
東京の桜の下、肌寒さを口実に彼に身を寄せていた記憶が蘇る。
「寒くなったら、使って」
その優しさが、会えなかった日々に降り積もった寂しさを、じんわりと溶かしていく。
片手にストールを握りしめたまま、たまらずその胸に抱きついた。