触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
 ◇

 はやる心を持て余し、迎えを待たずに駆けつけた彼の家の前。
 ちょうど、ビニール傘を持って出てきた航は、雨に濡れた私を見て、目を丸くした。

「……え、夏帆!?」

 彼にしては珍しい、大きな声。

「へへ……早く会いたくて、来ちゃった」

 それを聞いた航は照れくさそうに、家の中へと促してくれた。

 玄関先で、タオルを借りる。
 彼の洋服と同じ柔軟剤の香り。

「これも……航の匂い」

 鼻先を埋めていると、航は慌ててそれを取り上げ、自分でも確認していた。
 私は笑いながら「返して〜」と奪い返し、宝物のように胸元で抱きしめた。

「今、洋だけいるわ。部屋……行く?」

「……うん」

「飲み物、何か持ってくか」

 そう言って歩き出した彼の背中を追う。

 リビングを覗くと、壁際にあるソファで、ヘッドフォンをつけた洋くんが腰掛けていた。
 私に気づくと、小さな会釈をしてくれる。

 彼は、航より二つ下の中学三年生。
 かなり人見知りらしく、航よりもずっと静かで、私もまだ一、二度しか言葉を交わしたことがない。

 冷蔵庫から麦茶を取り出した航とともに、昨日に引き続き、二階にある彼の部屋へと向かった。
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