触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。

 そのまま互いに顔を傾け、唇を重ねる。

 重力に抗うことをやめ、身を預けるようにして二人でベッドに倒れ込んだ。

 ゆっくりと、大切に触れ合っていく。

 ただ、航のことしか、考えられなくなる。


 そして。

 まだ足のつかない場所へ、そっと踏み出した瞬間――自分でも想像もしなかったような声が、僅かにこぼれ落ちてしまった。


「…………!」

 慌てて、両手で自分の口元を塞いだ。
 下の階には、ヘッドフォンをしているとはいえ洋くんがいるのだ。

 一瞬にして我に返る。
 航の動きも、ぴたりと止まっていた。

 雨音だけが、不自然に静まり返った部屋に流れ込んでくる。

 横たわったまま無言で見つめ合っていると、航が私をぎゅうっと抱きしめ、深くて重い溜息をついた。

「ご、ごめん……」

 思わず、謝る。

「いや、違う……」

 私の肩に、顔を埋めながら。
 もう一度、熱を逃がすように長く息を吐いた航は、口を開いた。

「……夏帆」
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