触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
 ◇

 季節は確実に秋を深めている。
 少しだけ開けた窓から忍び込む夜風が、それを改めて感じさせる。

 ベッドに身を投げ出し、スマートフォンの液晶を指先でなぞる。
 数回の無機質なコール音のあと、静寂が破られた。

『はい』

「航っ……お待たせ」

『ん。お疲れ』

 その短い言葉で、一日分の疲労が甘く溶けていく。

 大学受験まではまだ一年以上あるとはいえ、難関大を見据えた勉強は、体力と精神力をすり減らす。
 けれど、航と繋がるこの時間が、私の呼吸を整えてくれるのだ。
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