触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
「航は今日、何した?」
『海で遊んだ』
「えっ、海? もう結構寒くない?」
『うん。しかも、男たちが変なノリで海に入り始めてさ。マジで冷たかったわ』
「えーっ……!」
笑って相槌を打ちながら、ふと、気にかかる。
『男たち』ということは――。
「女の子も……いたの?」
なるべくそのままのトーンで、尋ねてみる。
航は数秒間、小さく『あー……』と言ったあと。
『うん』と肯定した。
『でも、俺は全然喋らないよ』
「そっ、か……」
中学二年の夏。
航が同級生たちと肝試しをしていたところに混ぜてもらったときの記憶が蘇る。
たしかに航は、賑やかな輪の中でも基本的に静かで、男の子とばかり喋っていたと思う。
ただひとり、航に柔らかい笑顔を向けていた、葉月ちゃんを除いては――。
高校の数が少ない航の地元では、同級生のほとんどが同じ学校に上がったらしい。
葉月ちゃんも、そうだ。
いいな。
私も、日常の中で無邪気に遊んでいる航を、見たい。