触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
『……そういえば。冬期講習のスケジュール、出た?』
沈黙を埋めるように切り出された。
「あっ、ごめん……まだなの」
クリスマス直前の土曜日――航の誕生日の前日に会いたいと話している。
湊人の学習発表会で両親は半日不在。
凪沙も『彼氏と出かけてあげる』と言ってくれた。
これまで彼女のアリバイ工作を散々手伝わされてきた見返りだ。
あとは、冬期講習さえ重ならなければ――私の家で、二人きりになれる。
「今週中には確定すると思うから、わかったらすぐに連絡するね」
『うん』
大好きな声。
けれど、手を伸ばした虚空に、彼の体温はない。
それがどうしようもなくもどかしくて、胸の奥が締め付けられる。
「それじゃあ……おやすみ」
『……おやすみ』
通話が切れると、六畳の部屋には再び静寂が訪れた。
航の声の余韻が、まだ耳の奥にじんわりと残っている。
それを少しも逃したくなくて、急いで明かりを消した。
肌寒さを増した空気を遮るようにシーツを被り、目を閉じた。