触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
一秒でも、早く
予備校から帰ると、いつも以上に大急ぎで夕食と入浴を済ませた。
寝る前の挨拶を家族にする余裕もなく、自室へ駆け込む。
帰りの電車の中から『準備できたらすぐ電話するね』とメッセージを入れておいたため、息をつく間もなく航へ発信した。
ベッドの縁に腰を下ろし、祈るような気持ちでコール音に耳を澄ませる。
『……はい』
出てくれたことに、少しだけ安堵の息が漏れた。
「航っ! 今日、本当にごめんね……」
『…………』
少しのあいだ黙っていた航は、静かに尋ねてきた。
『……大丈夫だけど。でも、代わりに電話に出るって、どういう関係の人?』
いつもの落ち着いたトーンだ。
けれど、凪いだ水面の下に冷たい波を隠しているようにも感じられる。
「ただのクラスメイトで! 私が教室にスマホを置きっぱなしにしちゃって、鳴ってたから取ったって言われたんだけど……えっと、ちょっと変わってる人だから、私もよくわかんなくて」
焦りながらも、やましいことなど何もないため、ありのままをつなぎ合わせて説明する。