触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
 ◇

 鐘が鳴る直前、人影がまばらになった廊下を小走りで進む。

 仮病で早退するなんて。
 高校に入ってから、ずっと皆勤賞だったのに。

 航のほうは、学校はどうしたのだろうか。

 少しの罪悪感が胸を掠める。
 けれど、それよりも「会いたい」とはやる気持ちが、理性を凌駕していた。


「……あ」

 階段を駆け下りようとした踊り場で、小宮山に出くわした。
 下の階の自販機で買ったのか、紙パックジュースのストローを気怠げに咥えている。

「帰んの?」

 スクールバッグを抱え込んだ私を見て、怪訝そうに尋ねてきた。

「あ……うん」

「具合でも悪いの?」

「えーっと……」

 口ごもって苦笑いすると、小宮山はあっさりと「サボりか」と呟いた。

「……彼氏?」

「えっ?」

「遠距離なんでしょ」

 他人に興味などなさそうな彼が、私の恋愛事情を把握していたことに驚く。
 私から話したことはないので、噂などで知ったのかもしれない。

「何かを犠牲にする関係って、あんま長続きしなさそうだけど」

 嫌味を含んだ正論だ。
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