触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
 ◇

 地上に出て、静かな路地裏にあるカフェに入った。
 席の間隔が広く、人の出入りも激しくない。

 カウンターでドリンクを待つあいだ、航が教えてくれた。
 今朝、一度は学校へ行ったものの、踵を返して電車に乗り、ここまで来てくれたことを。

 今夜は宿の手伝いはないそうだが、学校をサボったことは両親に知られないほうが望ましい。
 そのためには、十九時までには家に着く必要がある。
 逆算すると、一緒にいられるのは一時間半ほどしかない。

 それでも――顔を見られたことが、どうしようもなく嬉しい。

 一番奥にある広いソファ席に、並んで腰を下ろした。

 ドリンクを木製のローテーブルに置くと、二人の間に静寂が落ちた。
 言葉の代わりに、どちらからともなく手を伸ばし、そっと指を絡ませる。

 安心するぬくもりだ。

「……俺さ」

 先に沈黙を破ったのは、航だった。

「今まで、夏帆の周りにいる男子のこと、考えたことなかった」
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