触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。

「……え?」

「いや、いるのはわかってるんだけどさ。考えないようにしてたっていうか」

 繋いでいないほうの手で、グラスの汗を拭っている。

「どういう感じで喋ってんのかとか、どんな距離感なのかとか。昨日……初めて知った」

 本来は、口数が少ない航。
 懸命に伝えようとしてくれているのがわかる。

「進学校で、頭いい奴らだろうし。俺よりも、夏帆と話が合うのかも……とか。そういう、しょうもないこと考えた」

「航……」

 航はそのまま、黙ってテーブルの木目のあたりを見ていたけれど。
 やがて「……でも」と続けた。

「夏帆は、見てるじゃん。葉月の、あの距離感」

 その名前に、心臓が跳ねる。
< 193 / 242 >

この作品をシェア

pagetop