触れられなくても、君がいい。
休憩するため二人で堤防に上がり、マスクを外して並んで座った。
濡れたシーグラスを、太陽にかざしてみた。
エメラルドグリーンの光が、透き通って乱反射するのに見惚れていた。
寄せては返す静かな波の音が、心地よく流れる。
眩しい光の中で、少しだけ低くなった彼の声が響いた。
「誕生日……おめでとう」
驚いて、隣を見る。
彼は私の方ではなく、穏やかに揺れる海面へ視線を向けていた。
胸の奥が、陽に照らされる肌よりずっと、あたたかくなる。
「……ありがとうっ」
嬉しさを隠しきれず、弾んだ声で返した。
航は照れくさそうに目を逸らしたまま、短い髪についた海水を払っていた。