触れられなくても、君がいい。
 ◇

 昼食を終えた午後。
 ホテルに面した道路の向こう、部屋の窓から覗く砂浜には、朝よりもさらに多くの人が溢れていた。

 航からもらったシーグラスを握りながら、窓枠に肘をつく。
 海の青さをぼうっと眺めていたら、真下から声が聞こえた。

 数人の男女が集まっており、その中に――航の姿を見つけた。

 身軽な装いで海辺の空気に溶け込む彼らは、地元の子たちなのだろう。

 航の横には、可愛らしい女の子がいた。
 彼と同じブラックの水着に、すらりと伸びた手足。

 彼女は笑いながら、航の肩を叩く。
 航の上半身は素肌だけれど、何の躊躇いもなく触れていた。

 彼の反応は薄いものの、リラックスはしているようだった。

 胸の奥で何かが軋み、手の中のシーグラスをぎゅっと握りしめる。
 すべすべとしていたはずの欠片が、急にざらついて感じた。

 出会ったばかりの私は知り得ない彼の一面を、目の当たりにした。

 大きな波音が、耳に響いた。
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