触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。

「……え?」

 動揺している航の声が聞こえる。
 私の心臓は、破裂しそうなくらい脈打っていた。


「……はやく」


 布団の中から、小さく呟いた。


 背後から、布が擦れる音だけがする。

 やがて、航も遠慮がちに潜り込んできた。
 私はまだ、彼とは反対のほうを見て、丸まったままだ。

 伸ばされた指先が、布団の端から出る私の肩に触れる。

「……っ」

 思わず、震えてしまう。

 すると、次の瞬間。
 後ろからきつく抱きしめられた。

 直接触れ合う素肌の感触。
 緊張とはまた違う熱が、込み上げる。


「夏帆……好きだよ。好き」


 すがりつくような声が、耳元に落とされた。

 身体の向きを、ゆっくりと変えると。
 ようやく、まっすぐに目が合う。


「じゃあ……もっとわからせてよ」


 涙の痕を残したまま、言った。


 私たちが出会った、あの夏の日。
 まだ二人とも、十二歳だった。

 暑い海辺で、並んで話して、恋に落ちたときと同じように。
 今の航の背景にも、カーテンの深い青が広がっている。

 海色の部屋の中。
 その先の景色へと、一緒に足を踏み入れたのだった。
< 218 / 242 >

この作品をシェア

pagetop