触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
「……え?」
動揺している航の声が聞こえる。
私の心臓は、破裂しそうなくらい脈打っていた。
「……はやく」
布団の中から、小さく呟いた。
背後から、布が擦れる音だけがする。
やがて、航も遠慮がちに潜り込んできた。
私はまだ、彼とは反対のほうを見て、丸まったままだ。
伸ばされた指先が、布団の端から出る私の肩に触れる。
「……っ」
思わず、震えてしまう。
すると、次の瞬間。
後ろからきつく抱きしめられた。
直接触れ合う素肌の感触。
緊張とはまた違う熱が、込み上げる。
「夏帆……好きだよ。好き」
すがりつくような声が、耳元に落とされた。
身体の向きを、ゆっくりと変えると。
ようやく、まっすぐに目が合う。
「じゃあ……もっとわからせてよ」
涙の痕を残したまま、言った。
私たちが出会った、あの夏の日。
まだ二人とも、十二歳だった。
暑い海辺で、並んで話して、恋に落ちたときと同じように。
今の航の背景にも、カーテンの深い青が広がっている。
海色の部屋の中。
その先の景色へと、一緒に足を踏み入れたのだった。