触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。

「……七海に何か聞いた?」

「え!? 七海ちゃんに見せたの!? あの丸文字を!?」

 思わず、といった調子で声が大きくなる。
 そして溜息をついたあと、「結局、いくら頑張っても丸文字は直らなかったなー」と、ぶつぶつ言っていた。

「七海に聞いてないなら、なんでわかったの」

「ベッドの上から、缶ケース見えたし。私、そんなチビじゃないよ」

「…………」

「もう。夏になると、いつも見るよねえ」

「…………」

 夏帆の言う通り。
 毎年この季節になると、俺はあの錆びた缶ケースを開けてしまう。

 ただ懐かしんでいるわけではなく。
 一種の、確認作業でもあった。

 手紙でしか繋がれず、一年に一度会えるかどうかだった、あの青い季節。
 一方、週末になれば必ず会える、今。
 あの頃の俺にしてみれば、とんだ贅沢な状況じゃないか、と。
 そう自分に言い聞かせるために、開けているのだ。

 しかし、人間とは欲張りなもので。
 結局、足りていないものにばかり、目がついてしまう。

 こうして隣にいられるのに。
 日曜の夜、彼女が東京に戻るときのことを、考えてしまう――。
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