触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
「…………」
フロントガラスの向こう、道路の右手にはどこまでも夏の海が続いている。
白く光る水平線を眺めながら、俺は短く息を吐いた。
「……うん。寂しいよ」
隣で、息を呑む気配がした。
いつもなら「いや」と否定するところを、今日はそうしなかったからだ。
「でも……それでも夏帆がいいから」
「航……」
「惚れた弱みってやつ」
近くにいてくれる相手なら、いた。
たとえば――葉月。
あの冬に振ったあとも、しばらくは諦めてくれなかった。
それでも、揺らぐことはなかった。
彼女は数年前に別の人と結婚し、この街を出たと、母づてに聞いている。