触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
距離があっても互いを選んだ俺たちは、若くして結婚した。
初めのうちは、夏帆がリモートワークを活用することで、この街で今よりも多くの時間を共に過ごせていた。
けれど、努力家の夏帆には、絶え間なく仕事が舞い込んでくる。
会社に顔を出さなければならない日が増え、二年ほど前からは、週末だけ帰ってくる形になった。
『今の会社で、もう少し経験しておきたいんだ。私も、宿を支えられるようになりたいから』
いつだったか、夏帆はそう言っていた。
その言葉に、嘘はないのだと思う。
現に、マーケティング会社に勤める彼女の尽力で宿のサイトを刷新してから、予約数は順調に伸びている。
本人は『この宿の魅力が、ちゃんと伝わるようにしただけだよ』と、控えめに笑うけれど。
誇らしい。
心の底から、そう思う。
その一方で、拭いきれない不安も横たわっている。