触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
 ◇

 彼女が二十三歳になる夏。

 東京で就職した夏帆とは、それまで以上に会えない日が続いていた。
 そんな中、わざわざ休みを取り、やや緊張した面持ちで、彼女はこの街までやってきた。


 ついに、別れを告げられるのかもしれない。

 そう思い、感情を閉ざした。


 俺のほうも、別れを考えたことがないわけではなかった。
 けれど――会うたび、夏帆があまりにも嬉しそうに笑うから。
 まるで繰り返し砂浜に戻る波のように、引き寄せられてしまっていたのだ。


『航と、お喋りしたいなと思って』

 夏帆はそう言って、俺を浜辺へ連れ出した。

 あの日も、空には同じ月が掛かっていた気がする。
 波打ち際でしばらく黙り込んでいた彼女は、俺を見上げると、ひどく恥ずかしそうに言ったのだ。


『高校二年の冬、「いつか、夏帆の帰る場所になりたい」って、言ってくれたでしょ?』

『あれってまだ……有効?』


 夏帆が先に踏み出して、二人の願いを口にしてくれたから。
 俺たちは今、こうして一緒にいる。
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