触れられなくても、君がいい。 ――青くて甘い二人の遠距離ロマンス。
 ◇

「癒されたくなったの?」

 八年前のことを思い出しながら背中に声をかけると、夏帆はくるりと振り向いた。

「うん。航とお喋りしたいなと思って」

「…………」

 ――まさかな。

 浮かんだ考えを、足元へ寄せてきた波に流した。

 夏帆はサンダルを脱いで両手に持つと、波打ち際まで駆け寄り、水を跳ねさせている。

「航も来てよー!」

 やけに、テンションが高い。

 先日の七海を思い出す。
 血が繋がっていないのに、あの二人はよく似ているのだ。

 誘われるがまま、近寄った。
 濡れた砂に、薄い月の影が映り込んでは、寄せる波にさらわれていく。


 足元を洗う白波を見つめながら、夏帆が静かに口を開く。

「……あのさ」
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