触れられなくても、君がいい。

 一年ぶりに、会える。
 けれど、浮つく気持ちを必死に鎮めようとしていた。

 その理由はシンプルに、『振ったのにしつこい』と思われたくない、というのもあるけれど。
 それ以上に――私はちょっぴり、航のことを警戒しているのだ。

 彼は、私が伝えた想いには『ごめん』と返したのにもかかわらず。
 夏が近づくにつれ、手紙の中でこんな言葉たちを投げてくるようになった。


『今年は、来られる?』

『誕生日プレゼント、いる?』


 それらは、恋する乙女が勘違いしてしまいそうなものばかりだ。

 もしかすると航は、無自覚な『タラシ』なのかもしれない――。
 あるいは、一年間文通が続いたことで、友達として心を開いてくれただけかもしれないけれど。

 いずれにせよ、面と向かってあんな言葉をかけられたら、困ってしまう。
 まるで引き波に足をすくわれるように、うっかりこれ以上好きになんてなりたくない。
< 50 / 163 >

この作品をシェア

pagetop