触れられなくても、君がいい。
 ◇

 部屋に荷物を置き、航と連れ立って宿を出た。
 肌を焼くような日差しの中、並んで歩き始める。

「ここから、どのくらい?」

「歩いて十五分くらいかな」

 肝試しは、山の中にある神社で行われるらしい。

 海岸と山の間を縫うように走る細い道路を、慣れた足取りで進む航。
 その様子を見ていると、彼の日常に少しだけ踏み込めたような気がして、密かな喜びが込み上げてくる。

「今日……本当に誘ってよかった?」

 ふと、心配そうに尋ねられた。

「私はいいんだけど……知らない子が急に混ざって、みんなは大丈夫かな」

「まあ、あいつらは気にしないと思うけど」

 航の友達。どんな雰囲気なんだろう。

「……それにしても。夏休みに男女で集まって遊ぶなんて、仲いいんだね」

「悠也にしつこく誘われただけで、俺は別に」

「ふうん……」

 去年もすごく楽しそうに遊んでいたけれど。
 あの黒い水着を着た女の子の姿が蘇り、胸の奥がちくりと刺された。
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